タイでは、日本とは比較にならないほどの大量の唐辛子が消費されています。
市場やスーパーマーケットに行けば、その種類が豊富なことがわかります。
また、売っている量も多く、その消費量の多さにも驚かされます。
乾燥した唐辛子のほか、生の唐辛子もあります。
また、น้ำพริกเผา(ナム・プリック・パオ=唐辛子と海老味噌のチリペースト)やพริกน้ำส้ม(プリック・ナム・ソム=唐辛子入り酢)、น้ำจิ้มพริก(ナム・チム・プリック=つけだれのチリソース)といった、唐辛子を使った各種の調味料も数多く売られています。
唐辛子の種類としては、พริกชี้ฟ้า(プリックチーファー)やพริกขี้หนู(プリッキーヌー)が有名なところです。
พริกชี้ฟ้า(プリックチーファー)とは、
พริก = 唐辛子
ชี้ = 指す
ฟ้า = 空
であり、上に向かって実がなることからその名前がついています。
長さが6~7cmの唐辛子で、辛さはそれほど強くはありません。
赤いものはพริกชี้ฟ้าสีแดง 、緑のものはพริกชี้ฟ้าสีเขียว と言います。
また、พริกขี้หนู(プリッキーヌー)は、長さが2~3cmの小粒の唐辛子です。
多くの唐辛子のなかでもこのプリッキーヌーは辛さが強烈です。
พริกขี้หนู(プリッキーヌー)を分解すると
พริก = 唐辛子
ขี้ = 糞、滓
หนู = ネズミ
となり、ネズミの糞の唐辛子という何とも変わったネーミングなのです。
なるほど通常2~3センチ程度の小粒の品種なので、その形状はいかにもネズミの「それ」なのです。
タイ人はこの小粒の唐辛子を好んで使います。
この辛さと香りがタイ人の好みに合っているのでしょう。
飲食店で、つまみなどを頼むと皿の隅にพริกขี้หนู(プリッキーヌー)がついてくることがあります。
これまでもこのブログでいくつかのタイ料理をご紹介いたしました。
(グリーンカレーの作り方 แกงเขียวหวาน https://ponce07.com/green-curry/)
なかでもトムヤムクン(スープ)やグリーンカレーなどが有名なところですが、これらの料理にも、このพริกขี้หนู(プリッキーヌー)が多く使われています。
พริกขี้หนู(プリッキーヌー)は小粒で非常に辛い品種で、通常は青いまま使われます。
グリーンカレーなどは、色が薄い緑色の汁で、赤い色が見当たらないので、一見するとそれほど辛くはなさそうに見えますが、実はこれが辛いのです。
けっこうな辛さが後から伝わってくるのです。
このพริกขี้หนู(プリッキーヌー)はพริกน้ำปลา(プリックナンプラー)の原料としても使われます。
น้ำปลาナンプラーに刻んだพริกプリック(唐辛子)とมะนาวマナオ(タイのライム)、ニンニクを加えたこの調味料はタイ料理には欠かせないものです。
昔に覚えた「작은 고추가 맵다」という韓国のことわざを思い出しました。
「小さな唐辛子が辛い」という意味になります。
日本流に言えば、「山椒は小粒でもぴりりと辛い」といったところでしょう。
あの小さいพริกขี้หนู(プリッキーヌー)に、これほどの辛さが宿っているとは、驚きです。
唐辛子の世界は奥が深いようです。
これからも、「辛い物好き」の一人として、アジアの食文化に多く触れていきたいと思います。
唐辛子 พริก その1
これからの暑い季節には、辛い料理が無性に食べたくなるものです。
食べた直後は、熱い感覚が口の中に広がりますが、やや遅れて汗が流れます。
この感覚が実に心地良いのです。
発汗は体温を下げる働きがありますので、蒸し暑い東南アジアでは辛い料理、とりわけ唐辛子を多用した料理が好まれているのです。
唐辛子の原産地は中南米と言われています。
メキシコでの歴史は大変古く、紀元前6000年に遡るとも言われています。
この唐辛子が世界各地に広がるのは15世紀以降のことなのです。
それが世界に広まるきっかけとなったのがコロンブスによるアメリカ大陸の到達です。
コロンブスはインドのコショウを求めて大西洋を越え、さらに太平洋も越えてアジアを目指しましたが、その途中アメリカ大陸に到達します。
しかしコロンブスはそこがアメリカ大陸とは知らず「ついに我々はインドにたどり着いた」と思い込んでしまうのです。
アメリカ大陸の先住民族がインディアンと呼ばれたり、カリブ海の島々が西インド諸島と呼ばれたりするようになったのは、こうした理由があったからに他ならないのです。
そしてコロンブスはそこで見かけた赤くて辛い香辛料も「きっとコショウの一種に違いない」と思い込み、ヨーロッパに持ち帰って「Red Pepper(赤いコショウ)」と紹介したのです。
胡椒とは関係が無いにも関わらず「Pepperペッパー」と呼ばれている理由は、こうした背景があったからなのです。
その後、唐辛子は大航海時代の波に乗って瞬く間に世界へと広まっていきます。
唐辛子は、漢字の意味としては、「唐から伝わった辛子」となります。
この「唐」はというその漢字が意味するとおり、南蛮渡来の物ということになります。
記録によりますと日本への初めての伝来は1542年ということになっています。
ポルトガル人の宣教師が、豊後国の大友宗麟に唐辛子の種を献上したのです。
しかし、この唐辛子の味は、当時の日本人の味覚には合わなかったようで、食用としては使われることはありませんでした。
唐辛子は観賞用や足袋の先端に入れるしもやけ止めなどとして使われるに過ぎなかったと言われています。
その後江戸時代になり、寛永期に江戸で漢方薬の研究をしていた中島徳右衛門という人物が、唐辛子に種々の香辛料を配合した「七味唐辛子」を開発します。
これが江戸の町でヒットすることになり、唐辛子は日本で香辛料としての地位を確立することになります。
しかし、日本での唐辛子の位置づけは、それほど大きくはなかったと思われます。
1980年代以降、エスニック料理が浸透し、「激辛ブーム」が起こってからは、料理に唐辛子が多く使われるようになりましたが、それは比較的最近のこととも言えます。
以前は、薬味や香り付けに一味唐辛子や日本特有の七味唐辛子が少量使われる程度であり、辛口の商品に関しても多くのレパートリーが用意されていたわけではなかったのです。
しかしアジアにはインドやタイ、韓国など唐辛子が日常的に使われる国もあります。
小さい子供もこんな辛い物を食べるのか疑問に思う人も多いのですが、こうした国々の子供も最初から辛い物が食べられるわけではありません。
小さい子供の頃から少しずつ唐辛子を食して、徐々に辛い味に慣らしてき、舌や胃腸を刺激に対して強くしているようです。
唐辛子 พริก その2 https://ponce07.com/pepper-2/
出生 เกิด
前回は、日本語にある独特な表現として、日本人の言霊(ことだま)信仰について書きました。
しかし、このような表現方法、つまり縁起の良くないことを直接的に表現するのを避ける言い方は、他の国でもしばしば見受けられます。
タイ語にも、これによく似た興味深い表現があります。
子の出生に関する表現です。
まずは、以下の2人の女性のダイアログをご一読願います。
A:เพื่อนดิฉันคลอดลูกผู้ชายเมื่อวานนี้ค่ะ
B:จะไปเยี่ยมเพื่อนที่โรงพยาบาลหรือคะ
A:ค่ะ คิดว่าลูกเขาคงจะน่ารักมาก
B:สมัยก่อน คนไทยไม่ชมเด็กว่าน่ารักนะคะ
A:เพราะอะไรคะ
B:เพราะกลัวว่าผีจะเห็นด้วย แล้วจะเอาเด็กไป
A:มิน่าล่ะ เด็กน่ารัก แต่คนไทยบางคนพูดว่าน่าเกลียดน่าชัง ไม่พูดตรงๆว่าเด็กน่ารัก
B:ค่ะ คนสมัยก่อนเรียกชื่อเด็กว่าหมู ว่าแมว เพราะจะหลอกผีว่านี่ไม่ใช่ลูกคนนะ อย่าเอาไปนะ
A:มิน่าล่ะ คนไทยก็เลยมีชื่อเล่นเป็นชื่อสัตว์กันเยอะ
B:แต่สมัยนี้คนไทยไม่เชื่อเรื่องนี้แล้วค่ะA:私の友達が昨日男の子を出産しました。
B:病院にお見舞いに行くんですか。
A:ええ。彼女の子はきっととても可愛いと思います。
B:昔は、タイ人は子供のことを可愛いとはほめませんでした。
A:どうしてですか。
B:ピー(精霊、幽霊)がそう思って、連れ去るのを恐れたからです。
A:道理で。可愛いくても、醜くて憎たらしいと言って、素直に可愛いと言わないタイ人もいます。
B:ええ。昔の人は子供の名前を豚とか猫とか呼びました。なぜなら「これは人間の子ではありませんよ。連れて行かないでね」とピーを欺こうとしたからです。
A:道理で。だからタイ人は動物の名前をニックネームにしている人が多いんですね。
B:でも今はタイ人はもうそれは信じていません。出典:中級タイ語総合読本 タイの社会と文化を読む
著者:斉藤スワニー 三上直光
出版:白水社
ピー(精霊、幽霊)が子供を連れ去るということは、あの世に連れていかれること、つまりは子供が死亡することを意味しています。
この発想は、古代の社会のように、乳幼児の死亡率が高かった頃の名残が色濃く残っているということができます。
現在はタイでも医療水準は相当に高く、死亡率は低くなっていますが、それでもこのような表現が残っているのです。
日本でも古代の社会では、幼少の頃の名前は、悪いイメージを連想させるものがよく使われていたと言います。
あの豊臣秀吉の幼少時の名は「棄丸(すてまる)」であったことは有名な話です。
子供が成長した後になって、正式な名前に改名していたのです。
現代のタイでは、行われることが少なくなったと言いますが、産毛の一部を残して、髷を作り、子供が成長してから(概ね11歳から12歳ころ)これを切り落とす、まげ落としの儀式があります。
髷は魂が宿るところであり、その魂が出ていくと疫病にかかってしまうと考えたので、幼少時には髷を残しておくというわけです。
いずれにしても、こうした伝統文化は、子の健やかな成長を願う両親や親族等の祈りが込められた大切なしきたりだったに違いありません。
我が子の成長を喜ばない親はいません。
このことは、古今東西変わることはないのです。
★今回参照させていただきました「中級タイ語総合読本」は、タイの文化について、平易なタイ文字で書かれている良書で、かつ解説も充実しており、タイ語の勉強に大変参考にさせていただいております。タイ語学習者で、初心者レベルを一定通過したかたは、ぜひお使いになっていただきたい一冊です。
細やかな日本文化 「言霊(ことだま)」
タイ語の辞書アプリのひとつ「J-Doradic」で日本語の「お開き」について検索してみると、「ปิด (งานเลี้ยง พิธี) =閉会(宴会、式典)」との説明があるのがわかります。
なるほど「お開き=opening」が「終了」を意味するとは…
一見論理的に矛盾しているような表現で、外国人にとっては、理解しがたい部分と言えるでしょう。
それでは、なぜこのような表現方法が生まれたのでしょうか?
その背景についてちょっと考えてみたいと思います。
日本語の表現を語るうえで欠かすことができない特徴のひとつに、日本人は「言霊(ことだま)」を重視する点が挙げられます。
言霊とは、古代からの日本人の持つ考え方の一つで、言葉には不思議な力が宿っているというものです。
そして、自分の望んでいることを現に言葉として発することで、その言葉どおりの結果をもたらす力があり、これが言霊なのです。
わかりやすく言えば、雨が降ってほしい時に「雨よ降れ。」と祈るようなことです。
普通に科学の知識をもった現代人であれば、雨の降る原理も当然に知っていることでしょう。
だから、このような言霊などは、ただの迷信に過ぎないと笑うに違いないでしょう。
しかし、実際のところは、この「言霊」の影響を受けたとしか思えないような表現がいくつも見受けられるのです。
たとえば、結婚披露宴の席でのスピーチには「別れる」「切れる」といった言葉が登場しないことはよく知られています。
それは、「別れる」「切れる」といった言葉から、離婚や離縁といったことが連想されるので、「縁起が悪い」と考えるからにほかなりません。
お通夜やお葬式の場面でも、「重ね重ね」「重ねて」「再び」など、繰り返して起きることを想起させるような言葉も、やはり「縁起が悪い」言葉として避けられているのです。
これも、言霊が強く信じられていたことから生まれた風習といえます。
パーティーや宴会などの席で、会の終了が近づくと「宴もたけなわではございますが、そろそろお開きということで…」などと司会者が言うことでしょう。
冒頭で触れましたが、ここでいう「お開き」とは、もちろん「終了」の意味として使われています。
宴会の席は「おめでたい」場になりますので、やはり「終わる」という言葉は相応しくないと考えるから、「お開き」という言い換えの言葉になっているのです。
私たちは普段の生活のなかで、このような言い換えの言葉を自然に使っているのです。
科学的な知識をある程度持っている現代人であっても、言霊の発想は根強く生きているのです。
このことは、相手の気持ちを察して、不快な感情を与えない配慮とつながっているということができます。
迷信だ、根拠がないと言っても、社会には一定のルールが成立していて、それを守ることは礼儀作法なのです。
こうした配慮や礼儀作法は、長い歴史のから生まれた先人の知恵であり、これからも大いに尊重され、また後世に引き継いでいくことが求められるべきものだと考えます。
タイのお粥 โจ๊ก
タイの料理と聞いて、多くの日本人が想像するのが「グリーンカレー」や「トムヤムクン」、「パッタイ(タイ風焼きそば)」などでしょう。
辛いというイメージが先行して、何を食べても辛いのではないかと思う人もいるかもしれません。
辛くて味付けの濃いイメージの強いタイ料理ですが、辛くない料理も多くあります。
朝食によく食べられる「お粥(かゆ)」もそのひとつです。
ちょっと意外に感じるかたもいらっしゃるようですが、タイでもよくお粥が食べられています。
朝食にお粥を好んで食べる人が多いのは、もちろん中国でしょう。
タイには、華僑のように中国系のルーツを持つ人も多くいて、中国からの食文化も広く根づいているのです。
タイのお粥は「ジョーク(โจ๊ก)」と「カオトム(ข้าวต้ม)」の二つに大分できます。
ジョークとは砕いた米を煮込んだもので、米粒はほとんど形を残していない状態です。
ジョーク自体には味はついていません。
朝飯屋で提供されるのは、これに豚のひき肉や卵、刻んだ野菜・ショウガなどの具材をトッピングし、調味料が加えられたものです。
また、パートンコー(ปาท่องโก๋)と呼ばれる小ぶりの揚げパンとの相性が良いので、一緒に食べる人も多いようです。
このあたり食べ方も、中国からの影響が見受けられます。
一方のカオトムの「ข้าว」は米、「ต้ม」は煮るという意味であることから、直訳すれば「煮たご飯」ということになります。
日本の雑炊のように、汁物でご飯を煮込んだものです。
汁気が多く、こちらのほうは米の形状を残しています。
この写真は、クラビタウンの市場内にあったお粥屋です。
ここではジョークが売られています。
看板には、並盛り(=ธรรมดา)が25バーツ、卵入り(=ใส่ไข่)が30バーツ、小盛り(=เล็ก)が20バーツと書かれています。
ここには写っていませんが、スペシャル(=พิเศษ いわゆる「全部のせ」のこと)もありました。
味付けは比較的にさっぱりした感じです。
そのままでもいけますが、お好みに応じてテーブルの上の調味料を加えるのもOKです。
テーブルの上の調味料の使い方は、下記をご参考に…
↓
https://ponce07.com/seasoning/
辛いタイ料理はちょっと苦手という人も、このジョークなら美味しく食べられると思います。
ぜひトライしてみてください。