暑さが厳しくなりました。
この季節、冷蔵庫でキンキンに冷えたビールを味わうのは、まさに至福の時です。
チューハイやハイボールなど、冷やして飲む酒には氷が入っているものですが、ビールには入っていません。
日本では、極限まで冷やしたビールはありますが、氷を入れることは決してありません。
ビールに氷を入れるという発想そのものが存在しないと言ってもいいでしょう。
以前のブログ「左党(https://ponce07.com/drunkard/)」で、タイではビールに氷を入れる飲み方が一般的であると書きました。
はじめの頃は、氷を入れたらビール本来の味が薄まってしまうようで、なんとなくもったいないような気がして、入れないことが多かったのを覚えています。
しかし、暑い南国でのこと。
それも、オープンなテラスでの食事も多かったので、テーブルに置かれたビール瓶の中身は、すぐにぬるくなってしまいます。
ぬるいビールほど興ざめするものはありません。
より冷えたビールを楽しむために、氷を入れてビールを冷やしているのです。
こうした習慣はタイの他にもベトナムやミャンマーにもあるようです。
また、氷を入れて飲むのを前提にしているという理由もあり、東南アジアのビールは日本のビールと比べてアルコール濃度が少し高めになっているものが多いのです。
氷を入れることで、ビールにはおもに3つの変化が起こります。
まず挙げられるのは、温度の変化です。
氷に触れることにより、ビールの温度は一気に下がります。
次に、味が薄くなることが挙げられます。
氷を入れるということは、当然ながら氷が溶けて水になるわけですから、ビールの風味は薄まります。
それともうひとつ、炭酸が抜けやすくなります。
氷の入ったグラスにビールを注ぐと、氷なしのときと比べて、多くの泡が立ちます。
それと同時に、炭酸が抜けていきます。
そのため、のどごしの爽快感がやや減退してしまうのが難点です。
温度が低下することで、ビール自体の成分が変化し、それによって味や風味が変化するということが生じます。
しかしそれをどう受け止めるかは、飲む人次第です。
風味は若干薄まってしまうけれども、冷たくて軽い味わいのビールのほうが飲みやすいという人もいるかもしれません。
このような人は、氷入りがいいのかもしれません。
反対に、ビールそのものの味をしっかり楽しみたいという人には、氷を入れて飲むことはお勧めできません。
「氷を入れますか?入れませんか?」
飲食店でビールを頼むと、きまってこう聞かれます。
そこで、試しに現地風にならって、氷を入れてみることにします。
アイスペールに盛られた角氷が出されます。
なるほど、暑いタイでは、何を飲むにしても氷が欠かせないのです。
たしかにビール本来の味は薄まります。
しかし、この氷によってさらに冷やされたキンキンの感覚が心地良いのです。
また、最初の一杯は「氷なし」で、2杯目以降は「氷入り」でという選択もできます。
いまとなっては、氷入りに抵抗感がなくなりました。
飲食店では、きまって氷を頼むようになりました。
いかがだったでしょうか?
日本ではビールに氷を入れるなどということは、邪道でしかありません。
しかしながら、東南アジアでは当たり前のようにビールに氷を入れているのです。
ビールに氷を入れることでのメリットがありますし、必ずしも「邪道」とは言い切れないのです。
東南アジアへの旅行が再開されたら、現地で氷を入れたビールを試してみてはいかがでしょうか。
タイ語の表現で、氷入りは「ใส่น้ำแข็ง」、氷抜きは「ไม่ใส่น้ำแข็ง」となります。
なお、氷入りは店にもよりますが、たいていは有料です。
この店では、メニューに「グラス1杯なら2バーツ」「アイスペール1杯なら10バーツ」と記載されています。
