白い道 その14

言葉が通じない不自由さは相変わらずだったが、看護師や病院のスタッフは親切に接してくれた。
彼らはタイ語しか話さなかったが、言っていることが少しずつわかるようになってきた。
他にもわかってきたことはある。
入院時の食事は、タイ式と洋食式が選べること。
病棟には仏教式、イスラム式、キリスト教式の3つの礼拝室があること。
慰問のための演奏なのか、ヴァイオリン弾きの男がやって来ること。
見舞客のために院内の1階に花屋があること。
ホールのスペースにテーブルを並べて営業活動しているのは、生命保険会社であること。
デング熱が流行しているので、注意を促すチラシが配られていること。
病院内の雰囲気に少しずつ慣れていった気がした。
コンビニ通いにも慣れてきた。
月曜日になり、銀行で両替もできた。
親父の容体も回復し始めた。
このときになって初めて、クラビーからプーケットに転院したことを知ったという。
退院の日が見えてきた。
ただし、埋め込んだペースメーカーの初期不良をチェックしなければならないので、手術1週間後の診察が済むまでは、航空機搭乗のOKは出せないとのことだった。
退院してから、帰国できるまでは3、4日必要になる。
その間に泊まる宿を探しに、病院の周囲を歩き回った。
1軒のプチホテルを見つけて、宿泊の予約を申し出た。
病院の周辺は、観光地の雰囲気は全くなかった。
下町の庶民の暮らしぶりを垣間見ることができる。
あれほど不安の底に追い込まれたが、少しずつ明るさが見えてきた。
この街が好きになれそうなしてきた。

白い道 その15
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