白い道 その13

集中治療室の前の廊下で夜を過ごすのも、これで2晩目になる。
ベンチで横になっていたら、スタッフが毛布と枕を持ってきてくれた。
ありがたかった。
僕の方はともかく、おフクロは相当に疲れているはずだ。
昨日からほとんど食べていない。
手持ちの現金が少なくなっているのも気になった。
親父が倒れたのか金曜日だった。
両替はレートの良いバンコクの両替商でするつもりだったから、クラビーでは必要最小限しか両替をしていなかった。
バーツの残りが少ないのが気になったが、昨日今日がちょうど土日にあたっていたので、両替ができなかった。
カードを使ってキャッシングする方法もあると思ったが、面倒だし操作ミスが怖かったので結局我慢した。
食事も院内にあるコンビニで軽食を買って済ませた。
IDとパスワードをもらって病院内のWi-Fiに繋がることができた。
この時やっと自分のいる位置がわかった。
この病院がプーケット県のどこにあるのかやっと知ったことになる。
プーケットと言えばリゾート地で有名だが、ここは観光地からは離れた下町のようなところだった。
日本にいる姉にも連絡が取れた。
翌朝、手術がうまくいったことを知らされる。
親父も意識を回復した。
その晩に集中治療室から一般病室に移った。
一般病室と言っても大部屋ではない。
この病院の病室は個室しかないとのことだった。
もちろん同行の家族も使っていい。
3日ぶりにシャワーを浴びることができる。
「ホテルみたいだな」率直な感想だった。
「『ホテルみたい』じゃないよ。『ホテルとイコール』なのさ」
案内してくれた看護師の男が笑った。

白い道 その14
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