白い道 その8

長い待ち時間だった。
緊急治療室から出され、礼拝室で待つように告げられた。
英語でPrayer roomと表示されているこの部屋は、祈りのための場所である。
ムスリムが日に5回礼拝をするために用意された部屋でもある。
タイは仏教国だが、ムスリムも多くいる。
特に南部はイスラム色が強い。
病棟には仏教式とイスラム式の2つの礼拝室が用意されていた。
通されたのはイスラム式の礼拝室だった。
手足を洗って清めるための水道があるほかは、部屋のなかは整然としていた。
なるほど偶像崇拝を禁じるイスラム社会では、礼拝のための場はシンプルにできているのだ。
僕とおフクロの他には誰もいない。
待ち時間が長く感じられる。
転院先はプーケット県の私立病院に決まった。
タイでは治療費の安い公立の病院は、患者が多すぎて待たされることが多い。
富裕層はレベルが高くて対応の速い私立の病院を選ぶ。
医師は、急変を繰り返す親父の病状から、一刻も早い手術が必要と判断した。
スラートターニーの県立病院に転院したら、手術がいつになるのかわからない。
数日間待たされる可能性もある。
プーケットの私立病院であれば、翌日にも手術ができる。
「私立病院なので治療費は高くなってしまうが…」
医師からそう告げられたが、他の選択肢はない。
「プーケットでお願いします」
この医師の迅速な対応に感謝した。
時間がなかった。
今晩にもプーケットに移動するとことになった。

白い道 その9
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