大通りに出てみたものの、車の数はさほど多くない。
しかしタクシーを見かけることはなかった。
路線バスのようなものがあるようにも見えなかった。
仕方なしに、病院に戻ることにする。
入口にガードマンの若い男が二人いた。
仕方なかった。
頼る人間を選んでいる暇はなかった。
やる気のなさそうなその二人に声をかけた。
「すまないが、タクシーを呼んでくれないか」
「タクシーですか?・・・」
通じていないわけではない。
反応がないのだ。
もう一人の男は、完全に輪の外にいた。
こちらの話を聞こうともしない。
それどころか、路上の移動販売のアイスクリーム屋から、棒状のアイスクリームを買って、それをしきりになめていた。
やり取りを聞いていたのか、アイスクリーム売りのムスリムの女性が言う。
「アタシのバイクに乗って行くかい?」
驚いた。
思わぬところから救いの手が伸びた。