病院に担ぎ込まれた後は混乱の連続だった。
病院の入口で車椅子を借りて病棟に入る。
すぐさま緊急治療室に運ばれた。
それから事務員が駆けつける。
事情を聴かれたけれど、うまく説明できない。
患者との関係を聞かれて、「自分は息子だ」と繰り返したのは、どうやら理解してもらえた。
それから先の細かい部分はうまく理解できない。
苛立ちが募る。
前金(保証金)を求められるのは、想定の範囲内。
5万バーツだった。
タイ語はまったくの初心者なのに、いきなり本番のステージに引きずり出されたようなものだ。
ただただ混乱した。
整理がつかない状態だった。
とはいえ取り乱した態度は、決してとってはならなかった。
最も混乱し、不安の底に追い込まれているのは、まぎれもなくのおフクロに他ならない。
そのおフクロの前では、うろたえた仕草は見せたくはなかった。
ホテルの部屋は散らかしたまま。
荷物はそのままの状態だった。
一旦ホテルに戻って荷物を片付けて、カバンをここに運びこまないといけなかった。
病院の建物から外に出た。
ひどく眩しかった。
病院の前の道に出る。
舗装された道路ではあったが、強い日差しに照らされているからなのか、輝いて見える。
白い道に見えた。
この道の先にあるのはどこなのだろう。
見ようとしても何も見えない。
底の見えないような深い不安に陥った、