タイ気象局は、今日10月29日に雨季が明けて、冬に入ったと発表しました。
冬と言っても、日本の冬とはまったく異なりますが、それでも気温はある程度下がり、比較的に過ごしやすい季節となります。
タイの雨季は4月下旬~10月。
その後、11月~2月あたりまで、乾季が続きます。
僕がこれまでにタイに訪れたのは、いずれもこの乾季でした。
学生時代に初めて、バンコクとチェンマイに来たのは、2月から3月にかけてです。
その後は、サラリーマン生活を送っていることから、休暇の取りやすい年末年始に旅行することがほとんどでした。
その意味で、雨季というのを知らずにこれまで来ているのです。
もちろんせっかく観光にきたのに、天気の良くない日が続けば、それは面白くはないでしょう。
雨季が観光に不向きであるのは、当然といえば当然です。
しかし、将来は単なる観光ではなく、生活者の目線でタイと接していきたいと考えていますので、本格的な雨季のなかで、どのように過ごしていくのか、非常に興味のあるところです。
連日のようにスコールが続くような気候は、なにかと不便なことが多いのは事実ですが、いつかは、この時期でのタイ生活も経験したいと思っています。
かつて一度、スコールに遭ったことがあります。
それは、学生時代にチェンマイで経験したことです。
チェンマイ1991 เชียงใหม่ ๒๕๓๔ https://ponce07.com/chiang-mai%e3%80%801991/
その時期は乾季でしたが、まれにスコールが発生することもあるのでしょう。
旧市街の屋台の立ち並んでいる通りを歩いていたときのこと。
路上に陳列台を置いて、履物や雑貨、衣類などを売っている商人が、急に商品を片付け始めました。
それも、手早く片付けています。
ある者は、商品に大きめのビニールをかけて覆い始めました。
「何が始まったのか?」
事態が呑み込めません。
それからほどなくして、晴れていた空が、にわかに曇り始めました。
通りに出ていた人々は、足早に建物の中や軒下に移動していきます。
普段は、のんびりと歩いていることが多いタイ人ですが、このときばかりは、小走りに動きます。
何が起こるのか、そのときまで気づきませんでした。
その直後、雨が降り始めました。
それも、かなりの勢いです。
ついさっきまで、きれいに晴れていた空が、一瞬にして豹変したのです。
僕も、現地の人々と同じように、商店の軒下に走りました。
土砂降りの状態のことを「バケツをひっくり返したような大雨」と言いかたをする時がありますが、まさにそういう表現にふさわしい激しい雨です。
通りを歩く人は誰もいません。
日本国内であれば、傘をさして歩く人が何人かはいるのでしょうが、このときは、傘をさして歩いている人は皆無でした。
もっとも、これほど激しく降る雨の中では、仮に傘があったとしても、それはほとんど役に立たないことは明らかです。
それにしても、このスコールの始まりを、僕はまったく予見できませんでした。
地元民は慣れているのか、スコールが始まることを、直前に感づいて、素早く行動しているのです。
「オレにはまったく読めなかったな」というのが率直な感想でした。
激しい雨は、まだまだ続きます。
空は薄暗く、雨のやむ気配はありません。
たまたま駆け込んだ軒先の店は、喫茶店でした。
ずっと外に立たされるのも疲れるので、その喫茶店に入ることにしました。
扉を開けて中に入ると、コーヒーのいい香りが漂ってきます。
本格的なコーヒーを淹れてくれる喫茶店は、いまでこそたくさん見られますが、当時はまださほど多くなかったのです。
久しぶりに、格別の一杯を味わうことができました。
それも、スコールがもたらしたまったくの偶然に…
店を出ると、雨は既に止んでいました。
空は再び晴れ渡っています。
通りの屋台も、商品を陳列し始めて、営業再開です。
このスコール体験は、いまでも深く記憶に残っています。
普段はどちらかと言えばのんびりしているタイ人が、これほどまでに俊敏に動いているのを初めて見ました。
多くのタイ人は、傘を使わないことも初めて知りました。
偶然に、お気に入りの喫茶店を発見できた幸運も知りました。
こうしたことは、メディアを通じて得た知識だけでは、なかなか実感がわかないものです。
現地で実際に体験してみて、初めて理解できることなのです。
コロナ禍が明け、本格的に渡航が再開しつつあります。
実際に現地に足を運び、現地の文化を自身の目で見て、肌で感じる…
この当たり前の感覚を、これからも大切にしていきたいと思います。