トラベルライターの下川裕治さんは、自身の著書のなかで、旅に出るときに忘れてはならないもののひとつに「蚊取り線香立て」を挙げていました。
「蚊取り線香立て」とは、火のついている蚊取り線香を固定する薄い金属製の器具のことです。
蚊取り線香をまとめて買うと、1箱に一つ付いてくるようですが、バラで買ったときなどは、蚊取り線香立てがなくて困ることもあるのです。
なにせ火がついているものなので、適当に置くわけにもいきません。
灰皿などに置くことも考えられますが、大きさが適当でなかったりすることもあります。
ガラス製の灰皿であれば、割れてしまうこともあります。
火事になっては元も子もありません。
そこで、この蚊取り線香立てがあれば、大丈夫なのです。
高級ホテルでしか過ごしたことのない旅行者にはわかりにくいのかもしれませんが、バックパッカーの経験があれば、その気持ちがわかると思います。
僕自身のいままでの旅行の経験上、このことはよくわかります。
というより痛いほどわかります。
蚊に悩まされたことがありました。
学生時代にインドに行ったときのことです。
その時は、ネパールから陸路でインドに入国して、国境近くの木賃宿に泊ったのですが、近くに沼地があったのか、やたら蚊が多かったのです。
寝ているときに、顔をひどく刺されて腫れあがり、とにかく困りました。
かゆみと蚊の羽音が気になって安眠できなかったことを思い出します。
たかが蚊ごとき…といっても気にせずにはいられないのです。
またバングラデシュのダッカでは、近所の雑貨屋で蚊取り線香を買ったのです。
日本のものと形状はあまり変わらないのですが、蚊取り線香のことを英語で何と表現するのかがわからすに、紙に簡単な絵を描いて説明してようやく買うことのできたのを思い出します。
ちなみに蚊取り線香のことは「mosquito coil」というのだそうで…
バングラデシュは、当時アジアの中でも最も貧しいと言われた国のひとつでした。
ブラマプトラ川という大きな河川の河口に近いことから、2年に一度は大きな洪水が起きるような土地柄です。
そのような状況なので、ありとあらゆる風土病が蔓延していたのです。
泊っていたダッカ市内の安宿も、蚊の羽音が気になるところでした。
だから、蚊取り線香を買い求めたのです。
マラリヤなどの熱病も蚊が媒介するものです。
ベッドには蚊帳がついていましたが、やはり蚊には気を使います。
マラリヤに感染したら、40度を超える発熱が数日続くと言われています。
そこから戻ってこられるのか、そのまま帰らないのか…
確率は二分の一とも言われていました。
幸い問題にはなりませんでしたが、ちょっと不気味な感じがしたのを思い出します。
タイ国内のスーパーでも蚊よけは各種そろっています。
蚊取り線香のような古典的なものや電子式のもの、蚊よけ用のスプレーなど日本と遜色ない品揃えです。
価格帯も、日本と比較すると安価です。
各々蚊よけ対策は万全に。
そしてよき旅を…