食のタブー その2

宗教観や生活様式などの理由が食のタブーを生じさせているので、そのタブーは相当に根が深い。簡単に変えられるものではない。
イスラム教徒は、この世に唯一の神(アッラー)を信じて、その教えを日々実践して生活している。この日々の実践のなかにはもちろん食事も含まれる。
したがって食事のつど、神の教えで禁じられた食品や成分を避ける。こうした行為は信仰の実践に他ならないのである。
かつて日本の入国管理局のある支局で、収容しているイスラム教徒であるパキスタン人の男性に宗教で禁じられている豚肉を誤って提供したことが大きな問題になった。
給食業務を受託した業者が、誤ってベーコンを混入させてしまったという。男性は支局の給食を拒否して抗議の意志を示し、水や栄養剤だけを口にするハンガーストライキを始めた。
入管側は「確認が不足していた」と陳謝したが、これが国際問題にまで発展してしまう。
多くの日本人には理解しにくいが、ムスリムはそれほどまでに神の教えを厳格に実践するのだ。
イスラムの経典であるコーランには、「あなた方に禁じられたものは死肉、流れる血、豚肉、アッラー以外の名を唱えて殺されたもの」と定められている。
他の動物は食べてよいのに、なぜ豚だけは禁じられているのだろうか。
豚はもともと涼しい気候を好む動物であり、中近東地域のように日差しの強い乾燥した土地での生活に弱い。そのうえ汗腺がないので、体温を下げるために、泥水の中を転げまわることがある。
豚は反芻をしないために牧草や野草で飼うことができない。人間も食べることのできる穀物の類を与えなければならない。
こうした習性ゆえに、豚がいかにも不潔に見られるのも無理はない。
気候的な条件から飼育するのが困難な豚は敬遠される。豚がいなくてもまったく問題はなかった。羊や山羊、鶏など食用にできる動物が他にもたくさん飼われていたからである。
イスラムが始まった1400年前のアラビア半島では、豚は不必要であり、不浄な存在でしかなかったのに違いない。
こうした気候や地理的な条件などから、「豚=不浄のもの」という禁忌が生まれ、現在までに受け継がれているのだ。

食のタブー その3
https://ponce07.com/food-prohibitions-3/


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