地下鉄の建設というものは、莫大な費用がかかるもの。
完成しても採算ベースにのせるまでは、長い年月が必要と言われています。
たとえば、地下鉄路線としては日本で最も長い路線である都営地下鉄大江戸線の総工費は1兆3574億円に上りました。
1kmあたりの建設費は312億円で、都営地下鉄新宿線の235億円と比較しても、かなり割高です。
後発で建設された路線のため、既存の路線より深い部分を走らなければならず、駅のホームはかなり深いところに設置しなければなりません。
建設コストを下げるために小さなトンネル、小さな車両を採用するなどの工夫がありました。
それでも建設費用が莫大で、批判の声も多かったと言います。
しかしながら、東京都交通局の発表した平成30年度の収支状況を見てみると、収入が57,305,576千円に対して支出が56,324,394千円で、981,182千円の収益が上がっています。
黒字化には四半世紀以上かかりましたが、利用客数は都営地下鉄4路線の中では最も多く、都民の足として欠くことのできない路線となっています。
バンコクの状況に目を転じてみます。
バンコクで最初の地下鉄は、2004年に開業したブルーライン(チャルーム・ラチャモンコン線สายเฉลิมรัชมงคล)です。
バンコクはチャオプラヤー川のデルタゾーンにあるため、「どこを掘っても水が出る」と言われた軟弱な地盤だったので、地下鉄の建設には大変な困難があったと言います。
批判も多い中で1997年に建設が開始されました。
建設費は約27億ドルで、そのほとんどが日本国の円借款で賄われたとのことです。
最初の路線はバーンスー駅(บางซื่อ)- フワランポーン駅(หัวลำโพง)でした。
その後2017年8月にタオプーン駅(เตาปูน)- バーンスー駅(บางซื่อ)が開業して、タオプーン駅からは、新設のパープルラインに接続することになります。
それから南のフワランポーン駅(หัวลำโพง)から西方向に路線が延長します。
2019年9月にフワランポーン駅(หัวลำโพง)からラックソーン駅(หลักสอง)まで延長します。
一方、北のタオプーン駅(เตาปูน)から先は、チャオプラヤー川を越えてシリントン駅(สิรินธร)を経由してタープラ駅(ท่าพระ)間が2019年12月に先行開業します。(同区間の正式開業は2020年3月30日。)
これにより、ブルーラインの全線が開通することになり、タープラ駅(ท่าพระ)を起点に、シリントン駅(สิรินธร)- バーンスー駅(บางซื่อ)- スクムウィット駅(สุขุมวิท)- フワランポーン駅(หัวลำโพง)- タープラ駅(ท่าพระ)- バーンワー駅(บางหว้า)- ラックソーン駅(หลักสอง)という環状線部分を含むルートが完成して、その路線は都営地下鉄大江戸線のような6の字型になっています。
下の路線図の青い線がブルーラインです。
放射部分と環状部分からなる6の字型になっているのがわかります。
参考:https://metro.bemplc.co.th/MRT-System-Map?lang=en
実際に乗ってみると、同じバンコクのBTS(高架鉄道)と同じように、乗客は多く、車内は混雑していました。
駅構内も清潔で、空調もほどよく効いていて、快適です。
バスなどと比べると運賃は高価ですが、渋滞知らずで快適に移動できることを考えれば、それも許容範囲内と言えるでしょう。
採算のほどはわかりませんが、これからも多くの人々に愛される路線として末永く活躍してほしいものです。
さて、そのバンコクの地下鉄ブルーラインの駅で、注目の駅をひとつ紹介します。
それは「サナームチャイ駅(สนามไชย)」です。(冒頭の写真がコンコースです)
国鉄の終着駅と接続するフワランポーン駅(หัวลำโพง)から西に3駅目になります。
観光客にもよく知られている王宮やワット・ポーの最寄り駅となっています。
王宮の最寄り駅ということから、コンコースは王宮の広間を連想させるゴージャスなデザインとなっています。
たくさんの金箔が使用されているほか、シャンデリアに飾られた高い天井はひときわ目を引きます。
1番出入口をエスカレーターで出ると、そこは公園のようになっていて、美術館(サヤーム博物館มิวเซียมสยาม)につながっています。
バンコクの地下鉄駅は、その多くがシンプルな造りですが、このサナームチャイ駅は別格です。
タイへの旅行が再開できる日がいつになるのかまったく予想できません。
いつの日か自由に旅行できる日が戻ってきたら、多くの人にタイへの旅行をしていただきたいと思います。
そして、王宮やワット・ポーへの観光に行かれるときは、地下鉄を利用して、このサナームチャイ駅を通るルートを検討してみてはいかがでしょうか。