6月に入ってより暑くなってきました。
これからの季節は、マスクの着用が苦しくなります。
これまでもインフルエンザ予防のためにマスクの着用をすることがありましたが、それはきまって冬の時期。
真夏にマスクを着用することは、多くの日本人にとって不慣れなことです。
しかし今のご時世では、マスクの着用は必須です。
そこで夏仕様のマスクも出回っているようです。
大手の衣料品販売店で、夏仕様のマスクの販売が始まり、これを買い求める行列ができているとの報道もありました。
しかし、その効果はいかばかりか…
やはり布で覆うとなれば、空気の通りも遮断されるわけですから、口元に暑さが籠ってしまうのは仕方のないことです。
タイのような南国では、この口元の暑さ対策は、どのようにしているのでしょうか。
興味のあるところです。
今日は、タイ語の「暑い」「涼しい」ついて書いてみたいと思います。
一年間の平均気温はおよそ29度と言われるタイ。
タイ人は、とにかく暑さを嫌います。
この暑さゆえに、人々は徒歩での移動も極端に嫌います。
徒歩にして十数分の距離でも、タイ人はバイクやソンテオ(สองแถว=乗り合いの小型トラック)を利用したがります。
東京では、電車の駅にして1駅分程度の距離であれば、たいていは歩いて済ませるのでしょうが、バンコクではそうではありません。
近年発達したBTSや地下鉄は、冷房がよくきいていて、涼しくて快適です。
バスなどに比べると運賃は割高ですが、その快適さゆえに人気があります。
まさに、「イェンサバーイ(เย็นสบาย=涼しくて気持ちがいい)」なのです。
イェン(เย็น)は「涼しい」「冷たい」の意味で、サバーイ(สบาย)は「快適な」「元気な」という意味になります。
このサバーイ(สบาย)は、タイ人の気質を最もよく表現している言葉とも言われ、タイ語では頻繁に使われる単語です。
タイ人は、何につけても、このサバーイ(สบาย)の感覚を大事にします。
サバーイ(สบาย)が良いことで、マイサバーイ(ไม่สบาย=不快)は悪いこと、とはっきりと二分して考えます。
また、タイ語では「心」のことをチャイ(ใจ)と言います。
このサバーイ(สบาย)にチャイ(ใจ)をつけると「サバーイチャイ(สบายใจ)」となり、「気が晴れる」「安心である」「気が楽な」といった意味になります。
チャイ(ใจ)に「良い」という意味の単語であるディー(ดี)をつけると「チャイディー(ใจดี)」で、「親切な」とか「優しい」という意味になります。(修飾語は修飾される語の後に置きます)
チャイ(ใจ)に「黒い」という意味のダム(ดำ)をつけると、「チャイダム(ใจดำ)」で「腹黒い」「意地悪な」「冷酷な」という意味になります。
チャイ(ใจ)に「広い(กว้าง)」がつけば「チャイクワーン(ใจกว้าง)」で「度量が広い」とか「寛大な」という意味になり、「狭い(แคบ)」がつくと「チャイケープ(ใจแคบ)」で「度量が狭い」「心が狭い」という意味になります。
タイ語で「熱い心(チャイローンใจร้อน)」というのはどういう意味になると思いますか?
「熱い心」と聞けば、多くの日本人は、「熱血漢」あるいは「情熱的な人」のように考える人が多いと思います。
それは概ねプラスのイメージと言えます。
ところが、タイ人の多くはそのように考えません。
タイは気候的に暑い国です。
こういう暑い国では「熱い」ことは、あまり良いイメージを持ちません。
チャイローン(ใจร้อน)は「せっかちな」とか「短気な」という意味になります。
すぐに熱くなるような短気な人は評価が低いのです。
反対に、「冷たい心(チャイイェン(ใจเย็น))」は、直訳すれば「冷たい心」ですが、ここでは「冷血な」「非情な」という意味ではなくて、「落ち着いた」「冷静な」の意味になります。
「涼しい」「冷たい」を意味するイェン(เย็น)は、タイでは概ねプラスのイメージにつながります。
いつ何時でも、冷静沈着に行動する人は、タイでは高く評価されます。
ここでも「涼しい」「冷たい」を意味するイェン(เย็น)は、やはり良いこと「サバーイ(สบาย)」につながっているのでしょう。
ちょっと慌ててしまったときに「チャイイェンイェンナ(ใจเย็น ๆนะ)」と言われてしまったことがありますが、ここでの意味は、「少し落ち着きなさい」というようなニュアンスのやんわりとした注意なのです。
南国の言語の勉強をしていると、日本語とは少し異なったニュアンスに直面することがあります。
言葉というものは、やはりその土地に根ざした感覚というものが強く映し出されているような気がするのです。