タイ国鉄はどう変わるのか? レッドラインから読み解くSRTの未来図

 

前回、前々回ではタイの鉄道が抱えてきた負の側面にテーマを当ててきました。
そのような旧態依然とした体質と言われるタイ国鉄も、近年は改革が進んでいるように感じられます。
例えばレッドラインのように、既存の軌間(1000ミリ)でありながら高架・複線化・電化した新しい路線も生まれています。
このような新線の建設に伴い既存の路線の高架化が進み、踏切が徐々に減少しているのは安全管理の面で大きな前進であると感じます。
今回はタイ国鉄の描く将来のビジョンについて触れてみたいと思います。

タイ国鉄(SRT)は長年にわたり、老朽化した設備や慢性的な赤字体質などの課題を抱えてきました。
しかし近年は、大規模なインフラ整備や組織改革が進められており、従来の姿から大きく変わろうとしています。
結論から言えば、タイ国鉄は今後20年ほどの間に、現在とは大きく異なる近代的な鉄道へと変貌していく可能性が高いと言えるでしょう。

ただし、その変化は全国で一律に進むわけではありません。
バンコク首都圏を中心に整備が進む新しい鉄道網と、地方に残る従来型の路線が当面は共存することになりそうです。
そのため、タイの鉄道はしばらくの間、「新しい鉄道」と「昔ながらの鉄道」が併存する二層構造の時代を迎えると考えられています。

その象徴的な存在が、バンコク都市圏を走るレッドラインです。
レッドラインは、タイ国鉄が将来目指す鉄道の姿を先取りした路線と位置付けることができます。
レッドラインの特徴は、高架化によって踏切をなくし、複線化された線路で安定した運行を実現していることです。
また、電車による運行や高度な列車制御システム、バリアフリー設備なども導入されており、その姿は日本の都市近郊鉄道にも近いものとなっています。
タイ国鉄は今後、既存の近郊路線についても段階的にレッドライン方式へ更新していく方針を示しています。
ただし、予算や用地の確保といった課題があるため、まずはバンコク周辺から整備が進められ、全国への展開には長い時間が必要になる見込みです。

ドンムアン駅


踏切問題についても、大きな転換期を迎えています。
近年相次いだ重大事故を受けて、政府は踏切の安全対策を強化する方針を打ち出しています。
危険性の高い踏切については優先的に立体交差化を進めるほか、遮断機の自動化や道路信号との連携強化も進められています。
また、遮断機が完全に下りるまで列車を発車させないという新たな安全ルールも導入されています。

特にバンコク首都圏では、将来的に地上踏切をなくすことを目標としており、高架化や地下化が積極的に進められています。
しかし、地方には依然として手動踏切や警報機のない踏切も数多く残されており、全国的な安全水準の向上には相当な時間がかかると考えられています。

レッドラインの座席


さらに、タイ政府は鉄道を国家インフラの中核として位置付けており、高速鉄道の整備も重要な政策となっています。
現在、バンコクとナコンラチャシマーを結ぶ高速鉄道が建設中であり、将来的にはチェンマイ方面への延伸構想も検討されています。
また、ドンムアン空港、スワンナプーム空港、ウタパオ空港を結ぶ高速鉄道計画も進められています。

これらの高速鉄道が完成すれば、長距離旅客輸送の中心は在来線から高速鉄道へ移行していくことが予想されます。
その結果、在来線は都市近郊輸送や貨物輸送を担う役割がより強くなるでしょう。

貨物輸送についても、大きな変化が見込まれています。
タイ政府は現在、国内貨物輸送に占める鉄道の割合を大幅に引き上げることを目標に掲げています。
そのため、主要幹線の複線化や大型コンテナ施設の整備、新型機関車の導入などが進められています。
また、ラオス鉄道との接続強化によって、国際物流ネットワークの拡充も期待されています。

もっとも、貨物列車の本数が増えれば踏切事故のリスクも高まります。
そのため、貨物輸送の強化と踏切の安全対策は一体的に進める必要があります。

一方で、タイ国鉄そのものの組織改革も進行しています。
タイ国鉄は長年にわたり非効率な組織運営や財政難が問題視されてきました。
そこで政府は、鉄道資産を管理する部門と実際に列車を運行する部門を分離する改革を進めています。
すでにレッドラインについては専用の運行会社が設立されており、一部路線では民間企業の活用も進められています。

将来的には、日本のJRグループのように、インフラ管理と運行を分ける「上下分離方式」に近い仕組みへ移行する可能性もあると見られています。

このように、タイ国鉄は高架化・電化・複線化を進めながら、より安全で効率的な近代的鉄道への転換を目指しています。
一方で、地方には依然として単線・非電化・手動踏切を中心とした旧来型の路線が数多く残っており、その改善には長い年月が必要です。

今後、高速鉄道網の整備が進めば、長距離旅客輸送は高速鉄道が担い、在来線は近郊輸送や貨物輸送を中心とする役割へと変化していくでしょう。
しかし、踏切事故の問題については、都市構造やインフラ整備、安全基準などが複雑に絡み合った構造的課題であるため、短期間で完全に解決することは難しいと考えられます。

それでも、レッドラインに代表される新しい鉄道網の整備を見る限り、タイ国鉄は確実に近代化への道を歩み始めています。
今後数十年にわたり、その変化がどこまで全国へ広がっていくのかが注目されます。

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