最近の、AI技術の普及は、私たちの生活に革新的な変化をもたらしています。
AIによる自動車の自動運転技術は、ドライバーの負担を軽減するのみならず、交通事故のリスクを減らすことを可能にしました。
家電製品の操作も自動化が進み、便利で快適な生活環境を手にすることができるようになりました。
産業分野においても、生産工程にロボットや自動化システムが導入されて、効率的な生産が可能になったほか、データ分析ツールの活用は、市場動向の把握能力を向上させ、それがマーケティング活動に大きく寄与するようになりました。
教育分野においても。個々の学習ニーズに合わせたカリキュラムや教材が提供されるなど、効果的な学習支援が行われるようになりました。
AI技術の普及によって、快適で安全、かつ低価格で高品質の生活環境を手にすることができた半面、課題も存在します。
利便性が向上するあまり、いままでは人の手によってなされていた仕事が、AIに取って代わられるという懸念です。
例えば、過去に「ボーカロイドと音読さん https://ponce07.com/vocaloid-and-ondoku-san/ 」というコラムで書いたところですが、現在の人工音声の技術は相当に進んでおり、あたかも実際の人間が発音したような、自然な音声が作り出せるようになっています。
僕が毎日通勤で利用しているバスの車内アナウンスは、人工音声によるものです。
かつては、プロの声優さんが、実際に発声して、これを録音したものを車内アナウンスに使っていたのですが、現在では多くのバス会社が、人工音声によるアナウンスを使用しているようです。
AI技術の普及が、結果として声優さんの仕事を「代行」するようになったのです。
私たちの身の回りの多くの産業に従事している労働者が、このAIに取って代わられてしまう懸念は払拭できないのです。
翻訳の分野でも、技術革新が急速に進んでいます。
機械翻訳技術は、従前に比べずっと向上しており、大量の文書を素早く効率的に翻訳することが可能になりました。
AIによる機械翻訳は、膨大な言語データを学習して、統計的な分析を加えながら翻訳を行います。
手作業での翻訳作業に比べて、時間とコストを大幅に削減することができるようになりました。
翻訳品質も向上し、自然な表現や文脈を考慮した翻訳結果を提供することもできるようにもなってきています。
しかしながら、完全な自動翻訳の実現にはまだ課題があります。
特に、言語のニュアンスや文化的背景などを正確に理解して、それを適切に翻訳していくことは難しいとされています。
人間の翻訳者であれば、言語の微妙なニュアンスや文脈を正確に捉え、適切な翻訳を行うことができるでしょう。
そのため、高度な専門性や創造的な部分を含む翻訳業務においては、人間の翻訳者の存在が必要不可欠なのです。
では実際に、AIによる機械翻訳の実力は、どのくらい進んでいるのでしょうか?
話題の「Chat GPT」を使って、ちょっと試してみたいと思います。
タイ語を日本語に翻訳するプロセスを見てみます。
まずは、単純な語句の羅列と、ごく短い文章の翻訳をさせてみます。
次のタイ語を日本語に訳してください
กล้วย
อาหารไทย
จักรยาน
โรงพยาบาล
สถานีรถไฟร้านขายยาอยู่ที่ไหน
โดยทั่วไปคนญี่ปุ่นกินข้าวด้วยตะเกียบ
翻訳結果は、次のとおりです。
さすがですね。
まったく狂いがありません。
この結果が出るまで、クリックしてから1秒程度です。
では次に、少し複雑にしてみます。
文中に二つ以上の述語が表れる、いわゆる「複文」を翻訳してもらいましょう。
ฝนทำท่าจะตก เอาร่มไปด้วยดีกว่า
今にも雨が降り出しそうだから、傘を持って行ったほうがいい。【目指せ!タイ語の達人เก่งไทย ไม่ยาก・TPA Press】ทุกครั้งที่ฉันได้ยินเพลงนี้ ฉันก็นึกถึงเขาทุกที
この曲を耳にするたびに、彼のことを思い出す。【目指せ!タイ語の達人เก่งไทย ไม่ยาก・TPA Press】ความสมดุลของการพัฒนาระหว่างเมืองและชนบท, จะทำให้เกิดการอพยพของแรง งานเข้ามาทำงานในเมือง
都市と農村間の発展の不均衡が、都市に仕事を求めてやってくる労働力移住を生み出している【パスポート初級タイ語辞典・宇戸清治・白水社】
翻訳結果は、次のとおりです。
こちらもすごいですね。
言い回しに若干の違いはあるものの、文脈としてはほぼ的確にとらえています。
では最後に、翻訳が特に難しい「詩」について試してみます。
พลังงานจน(Power of Poor)より (https://ponce07.com/power-of-poor/)
สายลมจางๆ ยังล่องลอยจากแดนไกล
กระซิบคอย บอกเบาๆ เตือนให้เราลืมตา…
優しいそよ風が漂う はるか遠い地からのそよ風が
耳元でそっとささやく 俺たちに目を覚ませと…
翻訳結果は、次のとおりです。
直訳的な感じになってしまっているのがお分かりいただけると思います。
そして2行目の後半は、明らかに誤訳しています。
「ลืม」は「忘れる」の意味ではありますが
「ลืมตา」という熟語になると「目を開ける」「目を見開く」の意味になります。
続きも見てみましょう。
ชีวิตจนๆ อย่างเรา จะเอาอะไรหนักหนา
เช้าลุกขึ้นมา ส่งยิ้มให้โชคชะตา ศรัทธายังมีเหลือพอ
ถึงไม่ค่อยมีปัจจัย แต่ใจยังไม่อับจน
หลายครั้งทางชัน แต่ฉันรู้ว่าความจน มันมีพลังดิ้นรน
俺たちのような貧乏人の暮らしは 何をするにも困難ばかり
朝起きあがって 運命に微笑みかけてみる まだ信じている
持ち得るものはほとんどないけれど まだ気持ちは行き詰まってはいない
何度も何度も険しい道を来たけれど
俺は知っている 貧乏こそが奮闘するエネルギーになり得ることを…
翻訳結果は、次のとおりです。
ちょっと難しかったようですね。
概ねの意味は理解できますが、日本語として不自然な部分も散見されます。
「ปัจจัย」の意味について、辞書で確認してみましょう。
辞書は松山納先生の「タイ語辞典(大学書林)」です。
①要素、要因、原因、動機、因縁
②(生活、生産上の)必需品
③(仏教の)四事
④僧に渡す金銭
⑤後綴、接尾
第一の意味としては「要素」ではあります。
しかしここでは、二番目の意味の「生活上の必需品」から「生きていくうえで必要な物」という意味であることがわかります。
「多くの困難があるが、私は貧困の力が動き続けることを知っている。」の部分も、日本語の意味としては不自然な言い回しに聞こえます。
このようにしてみると、単純な語句の言い換えであれば、対応可能ではありますが、詩的な内容を含む文章になると、途端に不自然な表現になってしまいます。
やはり人間の感覚で訳していかないと、無理があることは明白です。
AIによる自動翻訳の機能が進んではいるものの、人間の翻訳者の役割や専門性は引き続き重要であることがわかります。
高度な翻訳業務においては、AI技術という有能な秘書と、幅広い教養を備えた人間との協働が、最も求められることと思います。